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読書日記

   冨の王国ロスチャイルド   池内 紀     東洋経済新報社

 いつかは飲んでみたいワイン「シャトー・ラフィット・ロートシルト」ロートシルトとは、ロスチャイルドのフランス読みである。ロスチャイルドの名前は他にも以外な所にも見られる。ニューギニア産の豪華な蝶に「オルニトプレラ・ロチルディ」の学名。南アメリカのダチョウの一種「レア・ロチルディ」。一般に私たちが知っている大富豪のロスチャイルドは同時に慈善家であり、世界的な美術品の保護者でもある。

 昔から時代の波に乗って大富豪にのし上がった成金がごまんといた。だが、成功者は慌ただしく交代していった。そんな中でロスチャイルドだけは19世紀のはじめに登場して以来、冨を維持しただけでなく、間断なく増やし続けた。そんな場合、他人のねたみやそねみにさらされるものだが、ロスチャイルドはねたみ以上に尊敬をかちえた。しかも「ユダヤ人」という生来のハンディーを背負って。ロスチャイルドはただ一人の権力に寄り添うことの危険を知っていた。

初期のロスチャイルドは手分けして情報を集め、商売に精を出し、顧客を掴んだ。ヨーロッパに分散した兄弟で確実な情報を握っていた。ロスチャイルドは「情報ネット」を完成させた世界で最初の企業だろう。その情報システムは二つの要因から出来ていた。一つはより多くのより正確な情報を集めること。もう一つは、より、早く、より確実に伝達すること。
 また、その教育システムも特異である。ロスチャイルドは科学教育を重視し、たえず最新の技術を学ばせた。絵やピアノやダンスに加えての科学である。当時それは極めて珍しい例外だった。第一世代は蓄財をまず教育に投資した。
 石油が注目をあびるのは20世紀になってからである。それまではランプ用、または機械油がせいぜいだった。いち早く石油の将来性に目をつけたのも、ロスチャイルドだった。
アジアの石油地帯への進出にあたり、米国ノスタンダード石油は国ごとに現地の言い値のままとした。石油の未開地であって、まず需要をよび起こす。その間に供給網をととのえ、本格的な需要が始まったときは、思いのままに根づけができた。

 ロスチャイルドの人間はつねに一つの仕事以外に情熱を傾ける対象を持っていた。一人二役のコンビネーションはロスチャイルド一族の特徴といえる。それこそ、人間性にまして、正確な時代への目と決断の早さの秘訣かもしれない。

 ワインにおけるロスチャイルドの生き方が金融業務すべてにわたるロスチャイルドをあざやかに示している。一つの「事件」の意味を正確に受け止め、くわしく分析し、ついては大胆に方針を改め、将来の方向を定めていく。細心に調査して大胆に投資する。

常に歴史の流れを注意深くながめ歴史の変化に対応していくことが長く生き残っていった秘訣なのだろう。歴史を顧みずにその変化に対応できない者は生き残れない。

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